「空からパンツが降ってきました」


 燐と雪男の場合


「拾って洗い直す」
「兄さん、目線が主婦のそれだよ。っていうか、自分のじゃないかもしれないのに」
「だったら雪男のだろ」
「なんで」
「だってここの洗濯物、俺のかお前のじゃん」
「…………なんていうか、ある意味すごい常識的だよね、兄さんって」
「は? 俺ら以外のパンツ降ってきたら大変じゃねぇか」
「だから、その大変な状況になったらどうする、っていう質問だと思うんだけど」
「えー……えーっと……やっぱり拾って洗って干す……?」
「あはは、ちゃんと乾かしてあげるんだ」
「濡れたパンツははけねぇじゃん」
「あははははっ」


**


ツボった雪ちゃん。






「最中に言われて一番ぐっときた言葉」


 燐と雪男の場合


「もなか……」
「餡子の詰まったお菓子じゃないよ、どこかのお馬鹿さんと同じボケはしなくていいから。そうじゃなくて、さいちゅう。セックスの最中ってこと」
「セッ……!?」
「これだけ僕としておきながら、未だに真っ赤になるあたり天然物だよね、兄さんって」
「ひっ、ひとをウナギみたいに言うなっ!」
「……養殖兄さん……兄さんハーレム……それなんて天国?」
「知るか、ばかっ!」
「ああ、話がずれたね。で、兄さん何かある?」
「えっ!? 俺が答えんのっ? お前答えろよ」
「兄さんが答えたら僕も答えてあげる」
「えー……ああ、じゃあ俺あれにするわ、『兄さん大好き』ってやつ」
「…………」
「あんときの雪男、すっげぇ可愛い顔してんだけど、……どした、雪男?」
「いや、被ったなぁって思って」
「は?」
「僕も、兄さんに『好き』って言われるのぐっとくる、って言おうと思ってたから」
「あははっ、相性ばっちりじゃん、俺ら」
「妙なところで双子っぽいよね、僕ら」


**


万年新婚ばかっぷる。






「今年の目標を一言で」


 燐と雪男の場合


「雪男に三食飯を食わしてちゃんと寝かせる」
「兄さんが自力で課題を終わらせるようにする」
「…………」
「…………ご飯はともかく、睡眠は足りてるよ」
「少ねぇだろ、どう考えても。っつーか、お前の目標は俺のことで、お前のことじゃねぇじゃん」
「兄さんこそ、僕の心配するより自分に関係する目標立てたら?」
「ばっか、兄ちゃんが弟心配しなくて誰を心配すりゃいいんだよ」
「そっくりそのまま返すよ、弟だからね、兄の心配くらいする」
「……やっぱりちゃんと雪男に飯食わせて寝かせる、だな、今年の目標は」


**


自分のことを考えてない相手の代わりに相手のことを考える。






「生まれ変わるとしたら何になりたいですか」


 燐と雪男の場合


「……俺、生まれ変わってもまた雪男の兄ちゃんがいい」
「…………そっちなんだ」
「そっちって?」
「いや、『悪魔じゃなくて人間が良い』って言うかなって」
「それも思ったけど。つかそうか、また悪魔の弟になったら雪男が可哀想か……」
「兄さんは今の僕を可哀想だと思ってるの?」
「は? いやだって、きついだろ、双子の兄貴が悪魔とか。そのせいでガキのころから悪魔が見えてたとか、戦ってたとか」
「……まあ大変だったのは否定しないけど、一言でも僕がそういうことを兄さんに言った?」
「……雪男?」
「つらいとかきついとかもういやだとか、言ったことがある?」
「…………いや、ねぇけど」
「だったら僕の気持ちを勝手に決めつけないで。たとえ生まれ変わることがあっても、兄さんの弟ってポジションを誰にも譲る気はないよ」


**


ベストポジション。






「プロポーズの言葉」


 燐と雪男の場合


「定番で言えば、毎朝僕のために味噌汁を作って欲しい、だよね」
「? 作ってるだろ?」
「うん、だから、僕たちはもう結婚してるようなもんだよね、ってこと」
「はっ!? えっ、そうなんの?」
「そうなるの」
「はー、そうかぁ……毎朝味噌汁作ってたらもう結婚してるのか……」
「そうだよ。だから、兄さんは不用意に他人に手料理を振舞わないこと」
「う、わ、分かった……」


**


ていうかそもそも君ら、兄弟……。




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2014.06.03
















安定の奥村夫妻。