「一日だけ神様になれるとしたら何の神様になりますか」


 燐と雪男の場合


「神って言われても」
「正直、あまり良い印象はないよね」
「まあな。神になるとか、悪魔が言ったらサタンになる宣言にしかならねぇし」
「速攻でヴァチカン本部へ連行、拘束のち処刑フラグだね」
「洒落にならん。大体もし神になれるなら、魔神じゃなくて料理の神とかの方がいい」
「でも一日だけだよ、なれるの」
「一日でもなってその味を味わってみてぇじゃん」
「料理の神様が作るものだったらすごい美味しいだろうけど、僕は兄さんが作るものの方が良い」
「そっかぁ? じゃあレシピを聞くだけにしとくわ」
「聞いて覚えられるもの?」
「ああ、まあ大体は」
「……その料理に関する記憶力と集中力を少しでも別の方向に向けられないものかな」
「最近、時間をかけないでできる掃除の裏技とかも覚えたけど?」
「…………」


**


着々と良い奥さんへの道を進む双子の兄。






「注文していたものと違うものが出てきました」


 燐と雪男の場合


「とりあえず伝票を確認する」
「雪男のだろ、って押し付ける」
「押し付けないでよ」
「だって俺が頼んだのじゃなけりゃお前のじゃん」
「だから僕のでもないんだってば」
「つか、なんでお前は伝票?」
「いや、どういう受理になってるのかなって」
「受理?」
「うん、注文したものが正しく受理されているけど間違って出てきた場合、そもそも間違って受理されている場合、どっちかなって気にならない?」
「や、結局出てくるもんは違うんだろ?」
「そうだけど、たとえば親子丼を頼んで正しく受理されてステーキ定食が出てきたら、親子丼の値段でステーキが食べられて得じゃない」
「まあそうだな」
「だけど始めからステーキ定食として受理されてたら、その代金しっかり徴収されるからごく当たり前の契約が成立してるだけだよね」
「お前さぁ……」
「とか言いながら、まあどっちにしろ違ってたら違いますって言うだけな気もするけどね」
「ははっ、なんだよ、結局は俺ら修道院育ちのびんぼー人だってことか」
「僕は未だにうちの学校の食堂に近寄れない」


**


黙ってるのも良心が咎める。






「お祭りに来ました。まず何をしますか?」


 燐と雪男の場合


「雪男、小遣いくれ」
「って兄さんがうるさそうだから行かない」
「!? 何でだよっ!」
「だって、正直屋台の食べ物ってそんなに美味しくはないし、人多いし、蒸し暑いし、良いことないじゃない」
「おっまえ! お前、ばかっ! ほんとバカ!」
「うるさいな、バカバカ言うなよ、バカ」
「祭りってのはそういうもんであって、そこがいいんだろうが! 焦げたお好み焼き、たこ抜きのたこ焼き、歯ごたえのない焼きそば、噛みきれないイカ焼き!」
「ほんとにそれがいいの?」
「雪男が一緒に行ってくれんならな」
「……それは財布的な意味、いっ、たッ!」
「本気で言ってんなら殴るぞ」
「……もう殴ってんじゃん」


**


弟はツンデレ。






「恋人に可愛くおねだりしてみてください」


 燐と雪男の場合


「雪男、俺、すき焼き、食いたい!」
「……それ、ただのおねだりだね。可愛くはないよ」
「う、うっせぇ! つか、男が可愛くとか、無茶振りすぎんだろ」
「まあ、女のひとみたいな可愛さは無理だろうけど」
「けど、なんだよ。じゃあ雪男やってみろよ。可愛く、だぞ?」
「うーん。じゃあ、こんなのどうかな」
「よし、どんとこい」
「兄さん、今日、一緒に寝てくれないかな?」
「!?」
「怖くて寝れないから、手、握っててもいい?」
「……ひっ、」
「ひ?」
「卑怯だろっ、それっ!」
「そう? 可愛くなかった?」
「――ッ、可愛いよ、ちくしょう!」
「あはは、だと思った。兄さん、ほんと、僕の『弟の顔』に弱いよね」
「兄ちゃん心をもてあそびやがって……っ!」


**


悔しい! でも可愛い! みたいな。






「恋人から突然借金のカミングアウト。どうしますか?」


 燐と雪男の場合


「何のためにお金を借りたのか問いただした上、契約書の提示を求める」
「け、ぃやくしょ? 借金の?」
「そう。金額と金利を確認しないと。兄さんのことだから騙されてる可能性も高いし」
「いや、いくら俺でもそう簡単に金借りたりはしねぇよ?」
「『連帯保証人』って言われて意味分かる?」
「???」
「ほらね。僕とか友達の名前を出されたらころっと名前書いちゃいそう」
「……それって、遠回しにバカって言われてるか?」
「まっすぐバカって言ってるんだよ」
「なお悪いわっ!」
「兄さんはどうする? 僕が借金あります、って言い出したら」
「あー……『そんな子に育てた覚えはねぇっ!』っつってとりあえず一発殴っとく」
「そもそも兄さんに育てられた覚えもないけど」
「で、バイトでも探す」
「……僕の借金なのに?」
「? だってお前のってことは俺のってことでもあるだろ?」


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燐ちゃんは素です。




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2014.06.03
















ツインズの会話って実は結構難しい、と思ってます。