ドミノ

BBB スティレオ 88P R-18 文章のみ 400yen
ふざすばシリーズ。
ドタバタ系の短編集。七編。
以下本文1000字抜粋。






「ドミノ戦線」より


 ばたばたと敵が倒れたため見通しが良くなり、集まっていた戦闘員たちの向こう側によく見知った銀髪の男が赤い大剣を手に立っていることに気がついた。
「ザップさんっ!」
 どうやらザップの担当する区画まで飛んできてしまったらしく、さらに間の悪いことに、敵のまっただ中に落ちたようだ。わたわたと慌てて仲間のもとへと走り寄ったが、レオナルドの出現に(多少なりとも)助けられたくせに男は「うざい、こっちくんなっ」と嫌そうな顔をして蹴りを繰り出してくる。
「なんでこんなとこいんだよ! 旦那んとこ戻れ、邪魔ッ!」
 斗流血法カグツチの使い手は戦闘狂の嫌いがあり、何かを守ることより、ただひたすら敵を倒すことに喜びを見いだすタイプだ。レオナルドのような非戦闘員は足手まといにしか見えないのだろう。実際そうであることは否定できない。
 そのことを重々承知していても、今のレオナルドには縋る相手が彼しかいない。先ほどのザップの一撃で敵戦闘員はあらかた倒されているが、それでもまだこちらに銃口を向けているものが残っているのだ。
「こっちだっていろいろあったんっすよ! 僕のことが邪魔なら、僕が逃げられる道を作ってくださいっ!」
 逃げ道が確保できないかぎり、嫌がらせのようにザップについて回る所存である。それくらいの根性がなければこの街では、ライブラでは生き残れない。
 そんな非戦闘員の決意を感じ取ったのだろうか。眉をつり上げ、「はぁああっ!?」と怒気をあらわにした男だったが、しかし何か思いついたのか、次の瞬間にやり、と口元をつり上げ意地悪げに笑ってみせた。
 ぞ、と嫌な予感に背中を震わせたレオナルドがザップのもとから逃げ出そうとする前に血糸で捕らわれ、身動きを封じられる。
「おい、魚類、俺だ。今俺のいる方向を気にしとけ」
 取り出したスマートフォンで弟弟子に連絡を取ったらしい男は、返事も聞かずに要件だけを告げた。これもまたあとから考えたことだが、連絡をしてくれただけでもザップにしてはまだ優しさが残っていたといえる、かもしれない。
 建物の間に血糸を渡し、その中央に同じく血糸でぐるぐるとまとめた哀れな後輩を設置してうしろへとめいっぱい引き下がる。それらを敵を倒しながらやってのけるのだから、本当に戦闘の才能とセンスだけは文句の付け所のない男だ。それ以外の部分についてはもはや語る言葉も持たない。
「そんじゃな、陰毛頭っ! お魚くんによろしくっ!」
「覚えてろよっ、シルバーシットォォォォォっ!」
 男が手を離せばパチンコの要領で、レオナルドは再び宙を行くことになるのだった。





ブラウザバックでお戻りください。