サイは投げられた!38号

BBB スティレオ 68P R-18 文章のみ 300yen
収録「冬の魔王と春の生け贄」
冬の魔王スティーブンさんと生け贄レオナルドくんパラレル。
ハート、濁点、奇声喘ぎなど、なんでもありなのでご注意ください。
以下本文1000字抜粋。






 屋敷は氷で覆われているだけでとくに侵入を拒むような何かがあるわけではない。痛みを覚えるほどの寒さに耐えることができれば、問題なく屋敷の中まで入ってこられるようになっている。友人たち以外にここを訪れるものが、今までにもなかったわけではない。人々を困らす『冬の魔王』を倒そうと正義感に燃える勇者一行か、あるいは魔王の機嫌を取るために差し出された生け贄か。たいていはそのどちらかで、今回はおそらく後者だろう、と侵入者の姿を確認しに玄関ホールまでやってきた魔道士は判断した。
 そこにいたのは、まだ成人すら迎えていなさそうな十代半ばの小柄な少年。帽子や耳当て、分厚い上着と防寒具で身を包んだ彼は、空気にさらされている鼻の頭を真っ赤に染め、かたかたと震えながら周囲を見回していた。
 かつり、と響いた足音に気がついたのだろう。はっ、とホールから二階へ伸びる階段を見上げた少年は、そこにいるローブの男を認めると、意を決したように、「あ、あの、」と声をあげた。
「ふ、冬の、魔王さま、でいらっしゃいます、か? 僕……その、この、近くの村のもの、なんですけど、」
 生け贄に、なりにきました。
 防具や武器を身につけていないため勇者ではない。だから生け贄に関することだと分かっていたが、まさか自らそう申し出るとは思っていなかった。生け贄が連れてこられるときはすでに死んでしまっているものか、あるいは逃げ出さないよう自由を封じた状態で捨て置かれるかのどちらかだ。この少年も生け贄をここまで運ぶ役を押しつけられたのだろう、と思ったのだが、彼は自らの足で、生け贄になるためにここまでやってきたとそう言う。
 しかし、生け贄になろうと彼が自ら思ったのか、なれと唆されたのか、命令されたのかは分からないが、少年も含め、人々は皆勘違いをしている。
「……贄は不要」
 そもそも魔道士は生け贄を必要としたことなど一度もない。差し出せ、と言った覚えはないし、なかったからといって村々に吹雪を向かわせることだってしたこともない。死んでいようが生きていようが、自分以外の何かがこの屋敷に入り込むことはむしろ、迷惑なことでしかないのだ。それなのに、人々は勝手に生け贄を求められていると解釈し、こうしてときどき送り込んでくる。
「ああなりたくなければ、さっさと出て行け」
 ちらりと視線を向けた先に積み上げられたものが何であるのか、少年はすぐに理解したらしい。彼は目に見えて顔





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