「自宅が火事になりました。まず何を持ち出しますか?」


エイトの場合

「……………………」
「リュックサック、持ってきたな。あれに荷物つめるつもりか?」
「ずいぶんとでかいカバンでげすな」
「防災カバンのつもりかしら」
「……………………」
「って、おい、剣玉とかヨーヨーとかは要らねぇだろう」
「兄貴、タンバリンとか鈴とか、どうするつもりでげすか?」
「クレヨンもお絵かき帳も要らないわよ」
「……………………」
「つーか、弁当とか菓子入れるのも止めろ。遠足じゃねぇんだぞ」
「せめて生ものはやめて、乾パンとかにしたらどうでげすか?」
「その前にエイト、それ、持って逃げるには無理な量じゃないかしら?」
「……………………!」
「バナナを仕上げとばかりに押し込むな! バナナはおやつに入りません!」


**


あ。入らないんだ。






ヤンガスの場合

「とりあえず、エイトの兄貴でがすか」
「エイトと一緒に暮らしてることが前提なのね」
「当たり前でがす! アッシと兄貴が離れて生きるなんて考えられねぇでげすから!」
「つーか俺、持ち出されるのか」
「安心してくだせぇ、兄貴くらいならアッシ、担いで走れるでげすよ」
「エイトならほっといても自力で出て来ると思うけど」
「何を言ってるでがすか、ククール! エイトの兄貴はこう見えて凄く純粋で真っ直ぐな人なんでげすよ!」
「……それが?」
「だから、火事なんてものに遭遇したら、燃え広がる炎を見ながらギターかき鳴らして、キャンプファイヤーの歌を歌いかねないんでげす! そんなことやってたら、兄貴、死んじまうじゃねぇでげすか!」
「……ヤンガス、お前は一体俺を何だと」


**


暖炉が出火元なら兄貴は丸こげだ。






ゼシカの場合

「そうね、日記帳、かな」
「え、ゼシカ、日記なんてつけてるの?」
「そんなの書いてるの、見たことねぇけど」
「こっそり書いてるのよ。それに兄さんや母さんや父さんの写真、挟んであるし」
「ああ、燃えちまったら戻ってこない、ってやつでげすな」
「そう。それに、万が一燃え残ったときのことを考えるとね」
「日記とかって人に見られたらキツイよなぁ」
「そうなのよ、ほら、失敗すると自分に返ってくるって言うでしょう?」
「え?」
「何が?」
「何って、呪い」


**


ね、ねーさん?






ククールの場合

「免許証と保険証とその他保険の証書」
「現実的過ぎて面白くない!」
「可愛げのない答えねぇ」
「ああ、あと現金」
「むかつくくらいすかした野郎でげすな」
「だって、必要最小限にしておかないと逃げ遅れでもしたら本末転倒じゃねぇか」
「確かに、それはそうだけれど」
「だろ? 逃げ遅れてオレの顔に火傷でもできてみろよ。人類最大の損失だぜ?」
「…………」
「………………」
「…………これを素で言ってるところがククールの可愛いところだと俺は思う」


**


エイトは普通にククールを可愛いやつだと思っていそう。
つか、免許証とか保険証ってあんた。






トロデ王とミーティア姫の場合

「城が火事になる、ということはあまり考えられぬが、とりあえず国印かのぅ。他の重要なものは大臣たちが持ち出すじゃろうし、国印は国王しか触れてはならぬと決まっておるからの」
「国印ってなんでげすか?」
「ああ、国書の最後、陛下の直筆サインのあとに押す国の印鑑のことだよ。あれが押してあって初めてその国が認めた文章、手紙ってことになる」
「どの国もかなり複雑な印を使うから偽造は無理だって聞いたことあるな」
「へぇ、やっぱり王様なのねぇ」
「姫殿下は如何です? もちろん城が火事になるなどということは我々が確実に阻止して見せますが、万が一、ということで」
「そうですわね、でしたらミーティアは写真立てを持って行きますわ」
「写真立て。案外女の子らしいことを言うんだな」
「何言ってるのよ、ミーティア姫は女の子でしょ」
「馬姫様、それ、何の写真を飾ってるんでげすか?」
「お父様とお母様と一緒に撮ったものと、あとは小さな頃エイトと一緒に写ったものですわ」
「……姫殿下……っ!」
「感動で言葉にならないみたいね」
「それにその写真の裏のものが焼けてしまっては大変ですし」
「……裏のもの? 裏側に何か隠してあるの?」
「ええ。お父様に書いていただいた遺言書が」


**


ミーティア姫は無駄な争いがお嫌いらしいです。




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2006.09.08








拍手お礼小ネタ第十九弾。
エイトの部分は回答者なのに一言もエイトが喋ってない。