「最近嬉しかったことを教えてください」


エイトの場合


「駄菓子屋で二連続でアイスが当たったこと。リーザスのガキ二人におはじきで大勝したこと。ゼシカに剣玉買ってもらえたこと。ヤンガスに割り箸鉄砲の作り方を教えてもらったこと。ククールに水あめ作ってもらったこと」
「……あんた、毎日幸せそうね」
「兄貴、なんつーか……ほんと、近所の子供みてぇな……」
「お手軽な奴だなぁ」
「あとはまあ、皆大きな怪我もなくその日の行程が終えられれば毎日嬉しいよ」
「…………」
「………………」
「……………………」
「熱計んな、聖水まくな、病気じゃねえしっ、呪いでもねえしっ! ってか、失敬だな、君らっ!!」


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珍しくリーダらしいこと言うから、皆びっくりした。






ヤンガスの場合


「あー、そうでげすね、この間久しぶりにパルミドに寄ったら、昔餌をやってた野良猫がまだ生きていたことでげすか」
「野良かぁ。パルミドじゃ生きにくそうだもんなぁ」
「アッシ以外にゃ餌をやる酔狂はいやせんしね」
「ヤンガスって本当に動物、好きだよな」
「ねえ、前から聞きたかったんだけどヤンガス、魔物を殺すのは平気なの?」
「うーん、できればあまり殺したくはねえでげすが、こっちも命かかってやすからね。それにこのパーティで戦意のない魔物を襲う奴なんざいねぇでげすし」
「ま、それもそうね」
「害がなけりゃ魔物もただの動物だしなぁ」
「なぁ、ヤンガス。いつかスライム牧場とか作ってよ。したら俺、毎日遊びに行くぞ」


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やっぱり少年ヤンガスのゲーム、買ってやるべきかな。






ゼシカの場合


「四日くらい前だったかしら。お休みがあったんだけど、その日一日エイトが大人しかったこと」
「……ゼシカの姉ちゃん、なんか疲れた母親みたいな台詞でげすな」
「もう否定する気も起きないわよ。騒ぎも起こさなかったし迷子にもならなかったし、ククールとケンカもしなかったし。私、それだけでもう良いわ」
「ちょっと気の毒になってきたでがす」
「じゃあゼシカ、それについてはオレに感謝しておくように」
「……? 何でククールに感謝しなきゃならないの?」
「だってその日エイトが大人しかったのって、前の日のよ」
「言ったら殺すよ?」
「………………うっす」


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エイトさんはたまぁに、部屋から一歩も出ずに大人しくしている日があるそうです。






ククールの場合


「タマゴを割ったら双子だった」
「あー、そういえばこの間飯作ってるとき、わざわざ見せにきたな」
「なんか得したようで嬉しくね? 珍しいもん見れたって気になるし」
「それでお前、もともとスクランブルエッグ作る予定変えて、ただの目玉焼きにしたんだっけ」
「……だって崩すのが勿体無かったんだもん」
「……ククールって結構子供っぽいところ、あるわよね」
「兄貴といい勝負だとアッシは思うでげすよ」


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そんなククールを可愛いと思う今日この頃。






トロデ王とミーティア姫の場合


「そうじゃのぅ、この間エイトが持ってきた酒が美味かったことかの。こんな姿をしておるとそれくらいしか楽しみがなくてのぅ」
「できるだけ陛下のお口に合うものをお持ちできるよう、精一杯努力いたします故」
「うむ、頼んだぞ、エイト」
「もうエイトの態度の違いについては深くつっこまないで次、行きましょ」
「馬姫さまはどうでげすか?」
「最近嬉しかったこと、ですわよね? そうですわね……不思議な泉のお水を飲んで、少しだけでも人の姿に戻れるようになったこと、ですわ」
「申し訳ありません、姫殿下。本来ならばもう呪いを解いていてもおかしくないのに、自分が不甲斐ないばかりに……」
「いいのよ、エイト。皆さんが頑張っているのはミーティア、よく理解してます。一人だけわがままを言うつもりはありませんわ。ただ、少しだけお話ができたので、それだけで今はいいのです」
「姫殿下……」
「お馬さんの姿では伝えたいことも伝えられませんもの」
「……姫が伝えたいことってのは何なんだろうな」
「普段色々溜め込んでそうで、聞くのが怖いわね」
「ぶっちゃけ、聞かないほうがいい気がするでげす」


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ヤンガス、正解。




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2007.08.23













拍手お礼小ネタ第二十八弾。