明日は何処へ?


(DQ8:クク主)


「なぁ、明日はどっち行く?」

 特に行く先も決めずにふらふらと歩き回る旅の同行者が、突然そんなことを口にした。今までこの少年がそういったことを尋ねてきたことはなく、次の目的地はほとんどククールがひとりで決めてきている。もちろん独断でそうしているわけではなく、一応は彼にも尋ねているのだが、ほぼ百パーセントの確率で同意が返ってくるのだ。
 どうした急に、と素直に首を傾げれば、エイトは「いや、さ、」とこの年の男にしては丸みのある頬を掻いて言う。

「任せっぱってのも悪いかなー、とか……」

 軽く視線を逸らして告げられた言葉に、「何を今更」と本音が零れた。口にしたエイト自身も「ですよねー」と笑っている。
 何もそんな理由を付けずとも、行きたい場所があれば言ってくれたら検討するのに、と思ったが、この少年が自分の希望を主張しないということはあまりない気もする。以前、暗黒神などという大それたものと戦う旅をしていたときも、それなりに己の意志を主張していた(しかも大部分が子供っぽいわがままであった)。今更こちらに対して遠慮をみせるということも考えられず、ほんとにどうした、とますます眉を顰めれば、「んー」と少年は困ったように笑って首を傾げる。
 たぶん、何か思うところはあるのだろう。けれどどう言葉にすれば良いのか迷っている。そう判断し、ゆっくり彼の考えが纏まるのを待てば、「ええと、モクテキイシキ、ってのを俺も持とうかな、とか」とエイトは言った。

「俺はさ、ククールに連れ出してもらって、こうやって旅してて、楽しいし嬉しいけど、お前はそれでいいのかなーってちょっと思った。
 俺馬鹿だし、ククールいないとマジ困るけど、無理して俺と一緒にいるんだったら、」

 最後まで言葉を聞かずに少年の額を指で弾く。それも結構強めに。

「いっ!?」

 ついでにぎゅう、と鼻を摘んだあと、もう片方の手を伸ばして両頬も引っ張っておいた。突然の攻撃に目を白黒させていたエイトは解放され赤くなった頬を庇いながら、「なんなんだよ、突然!」と牙を剥く。そんな少年ににっこりと笑みを浮かべ、常に見ない満面の笑みに嫌な予感でも覚えたのか、ひっ、とひきつった悲鳴を上げたエイトの頭をもう一度捕らえた。

「ちょ、な、ッ!?」

 逃げようとする彼の顔を追いかけてその唇を奪う。
 視線を合わせ、にったりと笑みを浮かべてもう一度キスを。
 真っ赤になって黙ってしまった少年の目をのぞき込んで、「で、明日は何処へ行こうか?」とそう尋ねておいた。




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2012.05.17
















エンディング後。