お揃いのモノ (青エク:雪燐) ぱたむ、と左の机に向かっている人物の尾が揺れる。 ぱたり、と追いかけるように右の机に向かっている人物の尾も揺れた。 後ろからその光景を見ている小さな猫又の二つの尾もまた同じようにぱたむ、ぱたり。 ついこの間まで右側の人物に尾はなかったはずで、耳だって普通の人間のような形だったはずで、言葉も全然分かってもらえなかったはずで、どうしていきなりこんな風に変わってしまったのだろう、とクロは未だに理解できていないまま。 それでも、雪男に尾が生えたその日、散々喚いて怒鳴っていた燐が、最終的にはぼろぼろと涙を零しながら「お揃いだ」と笑っていた。雪男の方も泣きそうな顔をして「そうだね」と笑っていた。 だからこれで良いのだと思う。 「お揃い」であることの威力はとてもすごいものであるらしい。クロの言葉を理解してくれるようになった雪男が燐には聞こえぬようこっそりと、「お揃いになれたから恋人にもなれたんだよ」と教えてくれた。兄弟で、恋人で、お揃いで、だからきっとふたりの尻尾が揺れるタイミングも、徐々にぴったりと重なってくるのだろう。今や振れ幅さえも一致しているのではないかと思うほど、椅子の下で揺れる尾は同じ動きをしているように見えて、思わず笑ってしまった。 「なんだよ、クロ、何ひとりで笑ってんだ?」 「どうしたの? 何か面白いものでもあった?」 そうして同時に振り返るものだから、ますます楽しくなってしまって、クロはばしばしと尾を揺らす。 『だって、りんとゆきお、おそろいなんだ!』 クロともお揃い、とそう言って撫でてくれる優しい悪魔たちが、これからもずっとお揃いであれたらいい。 そう思う。 ブラウザバックでお戻りください。 2012.03.11
アニエク後のイメージで。 |