数字が現す勝負結果。


(DQ8:クク主)


「エイト十三回オレ四回、結果オレの勝ち」

 告げられた言葉に鼻の頭にしわを寄せ、「俺、そんなに多くなかったもん」と文句を言ってみる。が、真っ赤な服の僧侶は「いいや、オレちゃんとカウントしてた」と首を振った。

「なんならヤンガスとゼシカに聞いてこいよ、半分くらいはふたりにも確認とったから」

 たとえ半分になったとしても六回で、ククールの数よりも多くなってしまい、どちらにしろこの勝負はエイトの負けとなる。

「それとも、四回以上だって言い張ってみるか?」

 四回。それは今朝起きてから、日が暮れてこの宿にたどり着くまで、ククールがエイトのことを罵った回数である。「バカ」「アホ」という単純な罵り言葉だけをカウントしていたのだが、いつもならば絶対それ以上多く罵倒されていると言い切れるのに今日は確かにそれほどバカにされた覚えがない。怒られはしたのだが、説教のなかにそういった単語が含まれていなかったのだ。
 対するエイトはといえば、どうやら今日は十三回ほどククールのことを「エロ僧侶」だとかそういう罵りを発してしまっているらしい。身に覚えがないこともない、こともない。
 そもそものことの発端は、これまたくだらない言い合いだったのだ。いつもひとのことをバカだバカだと言ってくる男へあんまりバカバカ言うな、と怒れば、じゃあお前もオレをエロだなんだ言うのやめろよ、と返され、ククールほど言ってないと言い返し、じゃあどっちが多いか勝負してみるか、とそんな流れ。

「……絶対お前、わざと言わないようにしてたろ」

 そう恨みがましげに唇を尖らせれば、何を当たり前のことを、と言わんばかりの視線を向けられた。

「勝負なんだから当然だろ」

 バカ、と続けられた言葉に「五回目っ!」と指さして言う。まだ今日は終わってないのだ、だから今のもカウントするべきだ。
 その主張にため息をついて「まあいいけど」とククールは首を傾げる。

「負けたらその回数分、っての、覚えてるよな?」

 そういって彼が聞き手に掲げるものは小さな小瓶。中にはカラフルなあめ玉が入っており、エイトが好んで持ち歩いているものだ。まだ封の開けられていないそれの中にはおそらく二十個近くはキャンディが入っているだろう。

「っ、く、くくーるさん! 食べ物っ、食べ物を粗末にするのは、よくないとっ!」
「粗末になんかするつもりねぇよ? ちゃんとお前に食わすんだから」
 まあどこの口か、はおいとくけど。

 そう言ってにんまりと笑った男に追いつめられ、逃げたベッドの上で壁を背に「このエロ僧侶っ」と睨みつける。

「はい十四回目」
 お前、飴食いたくてわざと言ってんじゃねぇの?

 くつくつと喉を震わせる男が、小瓶の蓋をぱかりと開ける。カラン、とあめ玉のぶつかる音が、今日ばかりは死刑宣告のように聞こえた。 




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2012.05.22
















ちなみにククールさんが負けた場合は、
「罵倒した回数ほどいうことを何でもきく」だったそうで。

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