掌の上で遊ばれているような。


(TOV:フレユリ)


 なんつーか、別に気持ちいいからいいんだけどさ、と白いシーツにくるまったまま、掠れた声でユーリが言った。

「毎回毎回、好き勝手してくれるよな、お前」

 そう言う彼の瞳は、先ほどまでの情事の名残か、まだ若干潤んでいるように見える。不服であることを示しているらしい少し尖った唇に誘われるようにキスを落とせば、「ひとの話を聞けよ」と怒られた。

「聞いてるよ、ちゃんと」

 気持ちいいからいいんでしょ別に、と返した言葉に、「そうだけど」とまた唇を尖らせるものだから、同じようにキスを落として同じように怒られる。

「学習能力ってねぇの、お前」
「ユーリに言われたくないよ」

 キスをされたくなければ唇を尖らせなければいいのに、という言葉へ、「オレが悪ぃのか」と鼻の頭にしわを寄せられた。

「まあ、そうだね。可愛いユーリが悪い」

 そう言ってまたちゅ、とひとつキスを贈れば、盛大にため息をつかれてしまう。黒髪を広げてシーツに顔を埋めた彼は、「ほんと、好き勝手してくれる」と恨み言のように同じ言葉を繰り返した。

「すげぇ弄ばれてる気分」

 一体何をどうしたらそんな気分になれるというのか、フレンには全く理解ができないし、そもそも心外だ。

「むしろそれは僕が言いたい」

 そう返せば、なんで、と顔を上げた彼に首を傾げられた。

「ヤってる最中も大抵お前から動くじゃん」

 抱き締めるのもキスをするのも服を脱ぐのも、ユーリがしようと思う前に手が伸びてくる。心地よさのあまりその熱に逆らえない。翻弄しているのはフレンの方であって自分ではない、とそう言いたいらしい。
 確かに、誰よりも時間を共にしてもまだ足りないと飢えを覚える恋人を前にしてしまえば、自制や我慢など利かなくなる。欲しいと思った時には身体が勝手に動いているのだけれど。

「別に言動だけがすべて、ってわけじゃないと思うよ」

 ユーリがフレンの言動で翻弄されているのだとすれば、フレンはユーリの存在そのものに翻弄され続けている。彼がそこにいるだけで、もうそれ以外のことは考えられなくなってしまうのだから、掌の上にあるといえばむしろフレンの方こそ、だろう。
 恋人のそんな言葉を黙って聞いていた彼は、少し考えた後「いいや、そりゃ違ぇな」と首を振る。

「絶対オレんがお前に振り回されてる」

 どちらがよりたくさん、と比べられる事柄でもないとは思うが、ユーリはきっぱりとそう言い切った。

 互いに互いの掌の上で遊ばれているような。
 けれど柔らかくなるまで捏ねられ、粘土細工のように恋人の好きな形に作られるのならば、それもなかなか悪くない関係かもしれない。
 



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2012.03.21
















バカップルのピロートーク。

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