きっかけを作り過ぎて空回り。


(TOV:レイカロ)


 性別、年の差、体格差。
 いろいろと歯止めとなる要素は転がっているけれども、そこはそれ。一度一線を越えてしまえば、あとはもう転がり落ちるように。こうなることが分かっていたから手を出しあぐねていた、というのも少しあるのかもしれない。
 好きなひとが側にいれば、あんなことやそんなことをやりたい、と思うのは人間としてごく自然な感情だと思う。本来持つべき器官を持たぬ身体を人間と括れるかどうかはこの際棚に上げておき、とりあえず大変に即物的ではあるが下的な意味での機能は問題ないのだ。可愛い笑顔を見せられたらそれだけで体温が上がるし、周りに誰もいなければそのまま押し倒したいと思う。男はみんなケダモノなのよ、と冗談めかして言うことは多かったが、自分もそんなケダモノであることを否定しない。

 遠出を要する仕事が続き、最近まともに顔を合わせることもできていなかった。ダングレストに久しぶりに戻り、本当はすぐにでもアジトへ行きたかったが立場上それもできず、しぶしぶユニオン本部へ行けば、そこに愛しの恋人がいた。ただの偶然だろうとは分かっていたが、それでも手短に報告を済ませて時間を空けてみれば、逆に少年の方がこれから少し出かけなければならないのだという。
 がっくりと肩を落とした大人げない大人を前に、「ごめんね」と眉を下げる顔が可愛かったのでとりあえず許すことにして、早く帰って来てね、とねだっておいた。
 その甲斐あってか、思ったよりも早い時間にアジトに少年が戻ってきたため、じゃあ外でご飯でも、と誘う前に「レイヴン疲れてるだろうから、部屋でゆっくりしようね」と言われてしまう。こちらを気遣ってくれる気持ちを無碍にすることもできず、そうねと笑い、だったらせめて外ではできない程度にべたべたしようかと思えば、珍しいことに他のギルド員が皆アジトに揃っている状態。なんか嬉しいねとはしゃぐ少年に、ふたりきりになりたいだなんてとてもではないが言えなかった。

 レイヴンとて、ここのギルド員たちのことは気に入っており、共に過ごす時間も楽しいと思う。けれど、やはり好きなひとと久しぶりに会えたのだ、あんなことやそんなことをしたいと画策し、あわよくばを狙えるきっかけを作っておこうとする、そんな男の心理を誰にとは言わないが分かってもらいたい気もしなくもない。
 シャワーを浴び、自分の部屋へは戻らず恋人の部屋へ行ってみれば、既に子供は夢の中。朝からずっと動き続けで、夕食時もあれだけはしゃいでいたのだから体力的に限界だったのだろうことは分かるけど、なんだかいろいろと釈然としない感情がこみ上げてくる。
 ぐすん、と鼻を啜って部屋の電気を消し、肩にかけていたタオルを放り投げて少年の隣に潜り込んだ。許可など取っていないが、これくらいは許してもらいたい。

 寝てるとこ襲えばいいのに、と悪い顔して唆す黒髪の青年の言葉通りのことが自分には絶対にできないのだから、これくらいは許されて然るべきだと思うのだ。




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2012.04.21
















泣くなよ、おっさん。

リクエストありがとうございました。