「きっと同じことを考えてる」 (TOV:フレユリ) 超常的な何かを信じる気はこれっぽっちもない。エアルだとかマナだとか精霊だとか、確かに物理的なものに寄らないものがあることは知っているが、だからといって単なる人間である自分たちの間に目に見えない何かがあるだとか、まったく思ってもいない。ほとんど自分自身と同一視する程度には存在をごちゃ混ぜにして捕えている感はあって、でもそれは飽くまでもふたりが別個の存在であるから、だ。もし始めから一つの存在であるなら、切り離せないほどの癒着などできるはずがない。 どれだけ同じ時間を過ごしても、同じ夢を抱いても、自分たちは違う存在で、違う場所に立ち、違うものを見て、今は歩む道さえ異なっている。彼が何を思い何を願っているのか、本当のところを知ることもできず、こうだろうと思い込むだけで精いっぱい。 それはおそらくどんな人でも同じで、どんな関係であっても同じなのだろうけれど。 久しぶりだな、と顔を合わせた彼が笑う。元気そうだね、と返して握った手を胸元まで上げれば、まあな、という言葉と共にこつり、と拳を合わせられた。簡単な挨拶、くどくどとしたやりとりなど自分たちには似合わず、そもそも不要だ、とユーリの顔を見ながらそう思う。 すぅ、と細められた紫色の瞳を真っ直ぐに捕えたまま口元を緩め、きっと、とフレンは言った。 「同じことを考えてるね」 その言葉に「だったら話は早い」と腕を引いて連れて行かれた先は、人目の少ない場所。無言のまま重なる唇、舌を伸ばし、空白の時間を埋めるように互いの唾液を啜りあう。呼吸もままならぬほど長い口づけに酸欠を覚えたが、酸素よりも先に半身の存在を己の中に補給する方が大切だった。 長い口づけを終え、唾液で濡れた唇がようやく離れる。 「とりあえず今はキスだけで我慢しとく」 この先は夜にでも、という意味を込めて言えば、ふは、とユーリが吹き出した、「やっぱり同じこと考えてやがった。」 ブラウザバックでお戻りください。 2012.04.22
「足りない」って顔面に書いてある。 リクエストありがとうございました! |