お揃いの小物を身につけて。


(TOV:フレユリ)


 あれこれ聞かれるのが面倒で、普段はチェーンに通し首から下げている。首元の開いた服を着ることが多いため、それはそれで人の目にとまるらしいが、よほどの神経を持ったものでなければ他人の胸をじろじろ見たりはしない。せいぜい「アクセサリをつけるなんて珍しい」と言われる程度で、それに対するユーリの答えも「気に入ったんだ」だとか「お守りみたいなもの」だとか「イイヒトからのプレゼント」だとか、冗談混じりのものが多い。故に彼の言葉がどれ一つとして間違っておらず、事実のみ口にしているのだと気づけるものはあまりいなかった。
 チェーンの先に揺れるリングは、彼の左薬指にぴったりとはまるサイズのもの。その指だけでなく、ユーリのすべてが、リングを贈った人物のものであるという証。もちろん、その人物の左薬指にも同じデザインのリングがはめられている。

 これを貰って以降、夜を共にする際の手順がひとつ増えた。ユーリの唇へキスを落としたり、肌を覆う衣服を奪い取ったりするのと同じレベルで、フレンは必ず、首のチェーンからリングをはずし、ユーリの左薬指へはめる。
 普段から指にしておけ、と言われたことはない。フレンは邪魔にならない限りははめているようだったが、同じようにしろと求められたことはなかった。何故と問えば、男は口元を緩めて言葉を紡ぐ、つけてあげるのが好きなんだ、と。

「毎回結婚式をしてるみたいだよね」

 そっと宝物のように触れてくれるが、彼がリングをはめる指は節くれ立ち、傷だらけで、お世辞にもきれいで華奢とは言いがたい。しかしその手が好きだ、とフレンは言う。その指に銀色の輪を通すのが好きだと言う。
 たかだかアクセサリ一組の話、通常の恋人なら行える書類的な契約すらもできない関係。それでも、するりと絡まった指に揃いのリングが光る様子に安心を覚えるのは、目で見てはっきりと確証できるものが欲しいせいかもしれない。
 この男は自分のものなのだ、と。
 そして自分はこの男のものなのだ、と。
 フレンの部屋を辞し、帝都を後にしながら、ユーリは再び左薬指のリングを首元のチェーンへ戻す。
 他人からの追及が面倒で、傷つけるのが嫌で、失くしたくなくて。
 いろいろな理由付けはできる、それらも間違ってはいない。けれどおそらく一番の理由は、毎回飽きもせずに指輪をはめてくれる男がいるから、だろう。
 ぴったりと薬指にはめ込まれるその瞬間は、何度味わってもいいものだ。




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2012.03.31
















身につける小物といえば。

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