恋人誘拐事件の真相。


(TOV:フレユリ)


 たぶんね、と金色の髪の毛をきらきらと光らせ、真っ青な瞳を柔らかく細めて男は言った。

「僕が牢に入れられることがあるとすれば、その罪はきっと、」
 略取誘拐罪及び監禁罪及び強姦罪。

 何よりも誰よりも、下手をすれば自分自身よりも大切で愛おしい半身を、その所属する場所から力尽くにでも攫って自分の部屋に閉じ込めて、昼夜問わず犯し続けるだろう。おかしい、と自分でも思う。狂っていると言われても仕方がない。けれど彼が大人しくそうされる性格ではないと分かっているからこそ、従わせるにはあとは狂気性に訴えるしかないと思う。

「……フレン、お前、目がマジだぞ」

 呆れたようにそうツッコミを入れられ、「六割くらいは本気だからね」と答えた。

「…………」
「……ごめん、九割本気」

 じっとりと紫の瞳に見つめられ、口にした数字を訂正する。ひとのベッドに我が物顔で寝そべっていた男が身体を起こし、大げさにため息をついた。ほんとバカだよなぁ、と言いながら床に足をおろしたユーリは、素足のままぺたぺたと音を立てて椅子に腰掛けているフレンの元まで歩み寄る。はぁ、ともう一度ため息をついたかと思えば、ごっ、と頭突きをかまされた。

「ユーリ、痛い……」
「オレも痛ぇよ」

 赤くなった額を互いに押さえ、不毛なやりとりをしたあと黒髪を揺らす恋人は「お前が犯罪者とか、似合わなさすぎんだろ」と苦笑を浮かべる。そして言うのだ、絶対にそうはならない、と。

「……分からないよ? 僕だって人間だ」

 ひとであるからには過ちを起こさないとは言い切れない。理想を掲げて進んでいた道が、いつの間にか大きくずれてしまった男を知っている。ユーリがどのような理想を見ていようが、フレンがそうならないとは決して断言できないのだ。
 自嘲に歪んだ頬を両手で捕らえ、「そういう意味じゃなくて」とユーリは口を開く。

「合意だったら罪にはならねぇだろ」

 誘拐も監禁も強姦も。
 その相手が望んでついて行き、望んで閉じこもり、望んで犯されているのだとすれば、それを罪に問うことはできないだろう。
 そう言うユーリへ望んでくれるの、と問えば、お前が壊れたらなという返答と共に落ちてくる唇。
 正気を保ったまま六割を手に入れることと、壊れてすべてを手に入れることと。
 どちらがより幸せなのだろうか、と考えてしまうこと自体、すでにどこかおかしくなり始めているのかもしれない。 




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2012.05.05
















病んだ。

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