その体温は恋人だけのもの。 (DQ8:クク主) 道中、手ごわい魔物に連続して遭遇してしまい、精神的にも肉体的にもかなり疲労した状態でその日の目的地にたどり着いた。ちょっとゆっくり休んで気持ちを改めよう、と明日の朝はいつもより遅めに出ることを決め、それぞれ部屋に戻ったのが一時ほど前のこと。相変わらず同室者は赤い騎士団服の僧侶だったが、ふたりとも疲れていたため言葉少なめにそれぞれのベッドに潜り込む。 すぐに眠れるだろうと思っていたが、どうしてだかなかなか睡魔は訪れてくれない。疲れすぎていると逆にこうなるのかもしれない、とぼんやり思いながら寝返りを打ったところで、「エイト」と名を呼ばれた。 どした、と返せばぎしり、とベッドの軋む音が耳に届く。起き上がり、こちらに近づいてくる気配。もう一度どうかしたのか、と問う前にもそり、と隣に潜り込んできた長身。「せめてなんか言えよ」と呆れを含んだ言葉を投げつければ、「眠い」と返ってきたがそういう言葉が聞きたかったのではない。第一眠たいのならわざわざこちらに来ずとも自分のベッドで眠ればいいだろうに、と思っていれば伸びてきた手足にぎゅう、と身体を固定される。 「おい、ククール」 別に何かをする素振りがあるわけではなく、ただ単に抱きしめられているだけなのだが、だからせめて何か一言言えよ、と名を呼ぶが答えはなかった。 「…………お前、俺を抱き枕か何かと勘違いしてねぇか」 きゅうきゅうと、抱き締めてくるその強さは苦しさを覚えるほどではなく、もそりと身体を動かして腕の中で寝やすい体勢を探す。男の腕を枕にすればきっと明日の朝盛大に痺れているだろうが、もう知ったことではない。 ようやく一息つける場所を見つけたエイトが諦めて目を閉じたところで、「オレ専用」と、男が小さく呟いた。一体何のことを言っているのかと思えば、先ほどの「抱き枕」についてのことだと気づき、アホか、とため息が零れる。 けれど、もしエイトがこの男専用の抱き枕であるのだとすれば、こうして身体を包んでくれる体温もエイトだけのものだということで、それはそれで悪くないことなのかもしれない。 ブラウザバックでお戻りください。 2012.04.24
カリスマは半分寝ぼけてる。 リクエストありがとうございました! |