贈り物は食べ物か植物かそれとも装飾品が良いか悩み続けて一夜明け。


(DQ8:クク主)


 普通に考えるのならば、悩む必要もなく食べ物一択だ。食べ物というよりお菓子、飴玉、そのあたりを与えておけばまず間違いがない。肉を前にした犬よろしく、魚を与えられた猫よろしく、真っ直ぐにつっこんでくるだろう。
 しかし今はそういう光景が欲しいわけではない、子供の喜ぶ顔を見たいがために仕事を頑張る父親としての心境を味わいたいわけではないのだ。

 そもそも、と今まで彼にものを贈った状況を省みながら考える。あの少年を喜ばせるためにプレゼントする、ということ自体が少なかった、ような気がする。もしかしたら今まで一度、二度、あったかどうか、というレベルかもしれない。大抵エイトに何かをあげるときにはぴーちくぱーちくやかましく囀る口を黙らせるためか、ちょろちょろと落ち着きない行動をおとなしくさせるため。文字通り飴と鞭のアメでしかなかった。そうではないプレゼント、と改めて考えて、その難易度の高さに唖然とする。
 相手が女性であればここまで迷わないだろう、花束あるいはアクセサリという手が取れる。選ぶものさえ間違えなければ、そのあたりを渡されて嫌がる女性はまずいない。しかしエイトは女性ではないためその選択しも選びづらい。同性相手に喜ばれるものをプレゼントしようと思えば、やはり相手の好きなものを知るほかないだろう。トロデ王ならは値の張る酒を探してくるし、ヤンガス相手なら量の多い酒を探してくる。ついでに辛目のつまみがあればなお喜ぶだろうことは、今までともに旅をしてきて把握していた。
 そう考えて、結局は飴玉か、という結論に達するのだが、いやだからそうじゃなくて、と首を振る。これを何度繰り返しただろうか。

 シーツのなかでもそり、と寝返りを打って、壁際のベッドへ視線を向けた。そこでは悩みの大元ともいえる少年が、寝息すら立てずに静かに眠っている。眠っているときの彼は、普段の様子からは考えられないほどおとなしく静かだ。いびきはもとより寝返りを打つこともあまりなく、寝息すら聞こえてこない。あまりに静かなため死んでいるのではないか、と思ったのも一度や二度ではなかった。
 この少年へ、「恋人」として贈るプレゼントを考え始め、寝付けぬままこの時間。なんだってそんな条件化でプレゼントを贈る羽目になっているのかは割愛するが、売り言葉に買い言葉で引けない状況に追い込まれているのは確か。
 はっきり言えば、悩むことさえ馬鹿らしい。何をどうあったとしても「恋人」という関係をあのバカが理解するとは思えず、たとえなんとなく察していたとしても通常の「恋人関係」を彼に望むなど無理だろう。実用的なものとして本当に欲しかったものをもらえて嬉しい、ではなく、その気持ちが嬉しくて頬を染めるような、そんな気持ちをあの少年が理解できるかどうか。
 しかしだからといってここで手を抜くのもプライドが許さない。

 一層のこと揃いの指輪でも贈ってやるか。

 もちろん内側に互いのイニシャル入りのやつを。
 ドン引きされることは間違いないが、「恋人同士のプレゼント」という条件には合っているはずだ。あり得ないことではあるがもし万が一、あの少年が頬を染めて感動でもしてくれたら、それはそれで正直反応に困るけれど、それなりに責任は取ってもいいとは思っている。




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2012.05.28
















とりあえずベッドの中で取る責任を希望。

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