密着した身体が温かくて背に回ってくる腕が愛しくてその先を強請りそうになる。 (TOV:フレユリ) 過去の光景を振り返ったとき、彼のいないシーンを探す方が難しい。 それは誇張でもなんでもなく、本当にそれだけ一緒に時を過ごしていたのだ。どうやって日々を生き抜くかということに精一杯だった頃、大人たちの手を借りながらもなんとかふたりで暮らしていた頃、世の中の不平等さに嘆き怒りを覚え始めた頃、目標に向かって共に切磋琢磨していた頃、夢への第一歩をようやく踏み出した頃。常に隣には彼がいた。隣にいなければ目の前にいた。目の前にもいなければ背後にいた。とにかく手を伸ばせば触れることのできる距離に、彼がいた。 時が経てば必然的に変化を要求される。肉体的な成長、精神的な成長、新しく始まる関係、徐々に薄れていく関係。 彼との距離は確かに開いた、けれどそれはあくまでも物理的な距離についての話でしかなく、そもそも自分たちの関係が「始まった」ことなどない。強いていうのなら「始めから」こうであった。だから終わることもあり得ない。 それならば何の変化もない関係なのか、と自問しそうでもないか、と思い直す。 なんとなく、目の前にあった身体へ腕を伸ばして抱き寄せれば、彼が苦笑を浮かべる気配を覚えた。そしてしょうがねぇな、と言わんばかりに背へ腕を回される。 抱きつけば抱きしめ返されることも、その身体の温かさも、腕の中にある存在を愛しく想う気持ちも昔と何ら変わりはない。けれども、愛しすぎてこの先の行為をねだりたくなってしまうのは、子供の頃には抱けなかった感情。誰よりも大切なひとと抱き合うよりも強く、深く混ざることのできる行為を知ってしまったが故のこと。 時が経ち、知識が増えてより貪欲に、そしてずるくなった。 ユーリ、と耳元で少し低めの声を意識して出せば彼がこちらの要求を断れない、ということもフレンはまた、知ってしまっている。 ブラウザバックでお戻りください。 2012.05.01
「しょうがねぇなぁ」って言いながら。 リクエストありがとうございました! |