わくわくそわそわ落ち着きが無いのは自分か、それとも。


(幻水TK:主ジェイリウ)


 別に何らかの合図があるわけではない。そういう会話を交わしたわけでもなく、強いて言えば「ジェイル、今日こっちで寝んの?」というリウの言葉に無口の彼がこくりと頷いたくらい。風呂を済ませたレッシンとジェイルがふたりでこの部屋に戻ってきたあたりから、そのつもりなのだろうとは思っていた。
 団長部屋のベッドは確かに広いが、男三人が雑魚寝するには狭すぎる。ラグの上に適当に毛布を広げ、そこに転がるのが常だ。だったら、とまだ風呂を済ませていないリウは着替えを手に立ち上がる。

「そこ、片付けとけよ?」

 ラグの上に広げられたふたりが愛用している武器(手入れを行っていたらしい)や、カードゲームの残骸(どうやらレッシンが勝っているようだ)、モアナから渡されたクエスト依頼書が数通(ちゃんと目を通したのか疑問だ)。寝ることができるようにせめて場所を空けておけ、と指示して「ふろってくるー」と部屋を後にした。

「そういや三人で寝るの、久しぶりだなぁ」

 たまたまタイミングが良かったのか、城に設えてある大浴場にひとの姿はなく、ひとりでのんびりと湯船につかりながらぽつり、呟く。一応リウもジェイルも自分の部屋があるのだが、なんとなくレッシンの側に集まってしまうのは村にいた頃の癖みたいなものかもしれない。それぞれの遠征が重なっていたり、事務仕事に追われたりなんだりで、三人があの部屋に揃うのは本当に久しぶりだ。

「だからちょっとはしゃいでたのかね」

 少しテンションがおかしいな、と思っていたのだ。ジェイルはもとよりあの調子であるため分かりづらいが、ふたりともいつもより落ち着きがない気がしたのだ。目に見えて分かる違いではなく、なんとなくそう思っただけだったのでわざわざ確認はとらなかった。きっと彼らも無自覚だろう。
 一緒に寝るだけで何が楽しいのやら、と苦笑が零れるものの、リウだって嫌ではない。横になったまま下らない話をすることも楽しかったし、すぐ側にふたりの体温を感じたまま眠るのはひどく安心できるものだ。脱衣所で身体を拭き、着替えを身に纏いながら考え、はたと気が付く。
 果たして今日は、すんなりと眠りにつくことができるのだろうか、と。

「あー……」

 やばいオレ今日寝れんのかな、と呟いて口元を抑える。
 あのふたりの体温が温かくて心地よいことは知っている。けれど、火傷しそうなほど熱く、溶けそうなほどの痺れをもたらしてくれることもまた嫌というほど知っているのだ。
 三人で耽る行為が脳裏に蘇りぞくり、と背筋が震えた。

「ッ、や、いや、うん、するつもりねーかもしれねぇし」

 ふるふると首を横に振って、頭の中の光景を追い払う。彼らふたりにその気がないのに、ひとりだけ興奮しているだなんて恥ずかしすぎる。できるだけ平静に見えるように、と意識して呼吸を整えながら部屋へ戻るが、どうにもそわそわと身体が落ち着かないような気がして仕方ない。
 どうかそんなやらしいことを考えたなんてばれませんように、と意気込んで扉を開け、同時にこちらへ顔を向けたふたりの少年の視線に射抜かれ、脱衣所で覚えた以上に背筋がぞくり、と震えあがった。 




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2012.05.12
















するつもりがないことなんてあるはずもない。

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