勉強してきた事が役立たなくなる非常事態に心臓が痛いほど高鳴って! (TOV:レイカロ) 十以上も年の離れている男なのだから、きっとそういう経験もたくさんしているはずなのだ。今はこうしてカロルだけを見つめ、抱きしめてくれている(のだと思う)けれど、前は女の人を見てはだらしなく顔を緩めていたのを何度も目撃している。根っからの女好きである彼氏を、いかに自分に留めておくか。それが恋する少年の最大の悩みであり、目標でもある。 そのためにどうしたらいいのか、何をするべきなのか、そう簡単にひとに相談できることではないが、幸いなことにカロルの場合似たような状況にいる人物が身近にいた。しかも立場的にも同じ側にいるようで、からかいを多分に含んだアドバイスやら、忠告やらをたくさんもらうことはできていたのだけれど。 少しかさついた男の手が服の下を這い回る度に、心臓がどくどくと大きく跳ねる。頬や首筋に押し当てられた唇は、いつも交わす柔らかなキスとはどことなく色合いが違っているようで、触れられたところがじんわりと熱を発しているかのように熱くなった。 「んっ、レイ、ヴ、……っ」 望んではいたことだった。だからこそ羞恥に耐えていろいろなことを尋ねて、事前にしっかりと勉強をしてきたのに、いざこうして伸し掛かられ、その体温と重さを感じて、どうしていいのか分からなくなる。少しだけ落ち着く時間が欲しくて、途切れ途切れに名を呼んで見上げれば、ばっちりと目があった。 「……やっぱり、ヤダ?」 どこかしょんぼりした顔でそう尋ねられ、また痛いほどに心臓が跳ねる。 辛くても苦しくても恥ずかしくても、とにかく耐えてみせると覚悟していたのに、この心臓の痛みは予想外すぎた。まさかこうして組み敷かれただけで、今まで以上にレイヴンのことが好きで好きで仕方なくなるなんて、思ってもいなかったのだ。 「レイヴン、かわいいね」 手に余るような非常事態にもはやまともな思考などできるはずもない。 思ったままの言葉を口にして男の首筋に抱きついて、差し出したものは己の心と身体と、すべてを自由にする権利。 ブラウザバックでお戻りください。 2012.03.27
そもそも聞く相手が間違っているので、 役に立たなくて正解だと思う、その勉強した内容は。 リクエスト、ありがとうございました。 |