禁止事項


「お前、自分が僧侶ってこと忘れんなよっ! 回復役だぞ? チームの要だぞ? それが、どうしてこんな簡単に釣られたり、呪われたり、死んだりしてんのっ!」

 ふとククールが目覚めたら、極限までに機嫌の悪いエイトに散々に罵られた。

「僧侶って自覚、あんの? 確かにお前騎士団員だけど、攻撃力も防御力もねぇじゃん、前出てこなくていいんだってば、二、三歩引いて仲間の回復がお前の役目だろう?」

 色々言い返したいことはあるが、エイトは口を挟む隙間を与えてくれない。

「ゼシカが杖マスタするまで、ザオリク使えるの、お前しかいないの。俺が回復に回っても良いけど、ザオラルは確率半分だし、何より効率が悪いだろ。回復にターン使いたくないの、分かる?」

 いや、それは分かる。分かりすぎるほど分かる。ごもっともで。
 こくこくと頷くと、エイトはびし、とククールへ向けて指を向けた。

「簡単に踊るな、呪われるな、とどめをさされるな! 分かったな!?」

 どうして彼の機嫌がここまで悪いのかまったく想像もつかないククールは、とりあえず剣幕に押される形で「了解いたしました」と頷くしかない。言うだけ言って満足したのか、「あー、もう! 余計な力使った!」とエイトはククールへ背を向けて歩き出してしまう。
 結局なんだったというのか。
 わけが分からず、近くにいたゼシカへ助けを求めるように視線を向けると、彼女は何故か苦笑を浮かべていた。

「今ね、ククール、なかなか生き返らなかったのよ。エイト、何回ザオラルかけたかしら」

 つい先ほどの戦闘で、うかつにも敵に留めを指されてしまったということは覚えていた。世界樹の葉も手持ちになかったはずで、更に目覚めたとき教会の中でもなかったので、エイトが生き返らせてくれたのだろう、ということも想像がついた。
 それでか、とククールはようやく納得がいったように頷く。

「MPを無駄に消費したから機嫌が悪いのか。エルフの飲み薬で機嫌直してくれるかな」

 そう呟いたククールへ、「馬鹿ね」とゼシカが呆れたように言葉を零す。


「そんなことはどうでも良いの。エイトはね、あんまりにもあんたが生き返らないもんだから、本当に死んじゃったんじゃないかって、すごく心配してたのよ」


 もちろん私もヤンガスもね、と付け加えて、ゼシカは笑みを浮かべた。

「あんまり心配させないで頂戴」

 彼女の言葉を理解するまでしばしの時間を要し、ようやくククールは口元を押さえ込んで「悪かった」とだけ言葉を搾り出した。そんな彼へ「顔がにやけてるわよ」と指摘してから、ゼシカは

「謝る相手が違うでしょ」

 とククールの背を押した。
 それに逆らうことなく、ククールは先を行くエイトを追う。


 追いついて、彼に何と言おうか。
 どんな言葉を使えば今の気持ちを彼に伝えることができるだろうか。


 考えて、ククールは背後から彼を抱きこみ、耳元で「愛してるぜ」と囁いておいた。






***

ご提案くださった台詞:「簡単に踊るな、呪われるな、とどめをさされるな」




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2005.09.07








sunさまより、ご提案いただきました。(お名前出しても大丈夫でしょうか。)
ザオラルかけてる最中、エイトさんは半泣き状態。