エイトくんと大司教と騎士団長


「あの大司教がろくでもないやつだってのは俺でも分かる」

 エイトは自分の頭があまりよくないことを知っている。そんなエイトでも分かることはあるし、逆にそんなエイトだからこそ、分からないこともあるのだ。

「ククールさ、兄貴のこと、好き?」

 兄貴というのはもちろんエイトのことではない。腹違いの彼の兄、マルチェロのこと。どうにもニノ大司教に取り入っているようだが、率直な感想を口にすれば、彼もまたろくでもないことをしているようにしか見えなかった。力のないもの、弱いものを同じひととは思っていないような、そんな目をしている。
 エイトの質問に、ククールはしばらくしてから「分からない」と静かに答えた。「嫌いだ」とすぐには言えない、けれど「好き」だとも言えない。複雑な感情があるのだろう。家族を持たないエイトには分からないことだけれど。

 聖地ゴルドで、マルチェロと顔を合わせてしまった。

 偶然の出会いに僧侶の表情に影が落ちる。
 沈んだ彼の横顔にちくりと自分の胸が痛む理由も、エイトにはよく分からないままだった。




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2016.07.19