エイトくん迷子になる 「トラペッタに宝が9個残ってるとかどういうこと」 「オレに聞くなよ。このあたり、オレいなかったっつの」 ヤンガスが覚えたスキル「とうぞくのはな」は、その町や村にあといくつ宝が残っているのかが分かるものである。覚えてかなりの時間が経つ今になって、「取り逃し回収の旅に出るぞぉ」とエイトが言い出したため、ルーラで行ける場所を順番に回っているところだった。いや、正確にいえば順番に回ろうとまずトラペッタに飛んできたところだったのだけれど。 「しょっぱなからそんだけ逃してるとか、ないわー。ほんとないわー。やる気なくすわー」 「じゃあ止めて帰りましょうか」 もともとあまり乗り気ではなかったゼシカがくるり、と踵を返しかけ、少年が慌てて止めている。せっかくだからちゃんと探そう、と。もしかしたら今まで見逃していた何かがあるかもしれないから、と。 どちらかといえば負けず嫌いなゼシカのこと、捜索を始めると俄然やる気を出し、あっちはどうだこっちはどうだと、宝のにおいがしなくなるまで男どもを引っ張り回してくれた。 そうして最終的に、トラペッタとサザンビークで一つずつ宝が見つかっておらず、そして金のスライムもベルガラックとサザンビークのものが一つずつ見つかっていない状態。 「あー……悔しいわね、ここまで探して見つからないとか」 「サザンビークやベルガラックはともかく、トラペッタの狭い町で、どこに残ってるんでがしょうな、あと一つ……」 がっくりと肩を落としている仲間ふたりを見やり、地図を眺めてぼんやりとしているリーダへ視線を戻す。 「……それで? エイトくんは次の行き先、思いついたのか?」 背後からそう尋ねてやれば彼は頭を逆さまにするようにこちらを見上げて、眉を下げた。 「ぜーんぜん。どうしよう」 要するに、この取り逃し回収大作戦は次に行く先が分からないが故の、逃避のような行動だったのだ。 川なんだよ川、川の洞窟でさ、それは分かるんだけど、どの川だったのか全然思い出せなくてーと、頭を抱えるエイトを見下ろし、これはもう少し掛かりそうだなとククールは小さくため息をついた。 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
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