エイトくんとレティスさん 「力を試すだけにしちゃあ、ちょっと全力すぎやしませんかね、レティスさん」 ぜえはあと、肩で息をしながらエイトがそう呟けば、かの神鳥は「全力ですとあなた方の命はなかったですよ」とあっさり答えてくれた。何せ彼女は「神の鳥」だ。人間が何人束になったところで敵う相手ではないのかもしれない。 そもそも今回は、ゲルダを含めたパーティで初めて強敵を相手に戦ったのだ。いつもと少しばかり勝手が違ったのも苦戦した理由であるだろう。 「何でヤンガス置いてきたんだよ」 「いや、折角だからゲルダさんと戦ってみたいなって思って」 回復の要であるククールは外せず、祝福の杖が使えるゼシカも外せない。となれば、ヤンガスに馬車で留守番をしてもらうほかなかったのだ。そのためダメージソース不在となり、エイトはひたすら巨大な岩を神鳥に向かって投げ続けることになった。防御力が高い相手であったため、通常の攻撃では大したダメージにならなかったのだ。 「せめてもう少し準備してからにすれば良かった」 はあ、と疲れたように呟くエイトへ、「だったら、」と首を傾げて疑問を口にするものがひとり。続けて神鳥の巣まで行くパーティメンバになっているゲルダだ。 「一回戻って、回復してからのほうが良かったんじゃあないのかい?」 HPはともかく、MPはゼシカ以外1/3くらいに減ってるけど。 彼女からのもっともな指摘に、エイトはす、と視線を明後日の方向に飛ばした。 レティスを倒した後、「そのまま行くか」という問いに、何故だかリーダは素直にはい、と頷いたのだ。大きな爪に持ち上げられ連れて行かれた先は、ひとでは上ることのできない山の上。戻ることはできるとはいえ、ここまで来たからにはもう進んでしまおう、と内部へ足を踏み入れている。リーダの背中に「戻るのめんどくさい」と書いてあるのがはっきりと見て取れた。 「きっとここのボスも強敵だから、挑む前に一個ずつレベルあげとくのが目標な!」 気を抜くなよ、ときりっとした顔でメンバに告げる少年を前に、「レベルアップでのMP回復が目的なだけだろ」と僧侶がぼそりと呟いていた。 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
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