エイトくんとゴルド崩壊 状況はおそらく最悪。 もっとも起きてはならないことが、起きてしまった。 空に浮ぶ要塞のような城。 多くの命と引き換えに浮上したそこに、おそらく暗黒神はいる。 ヤンガスの言うとおり、魂を封じていた杖はもうない。 ラプソーンそのものを倒してしまえば、この悪夢も終わりにできるのだ。 唯一の救い、といってもいいものか。 この状況を引き起こした原因を担っている男の命は、助かった。失われかけていたそれに手を伸ばし、引き上げたのは男の、弟。 この先どのようなことがあろうと、きっと彼は、ククールは、マルチェロを助けたことを後悔しないだろう。 去っていく後ろ姿を見やるその表情がひどく痛ましくて、切なげだった。 「…………なんだよ、エイト。だからオレは今、話をする気分じゃねぇって、」 先ほど、そう断りを入れられていたし、おしゃべりの相手ならほかを探せとも言われている。それはわかっているのだけれど。 うん、ごめんな、と眉を下げて謝罪したあと、少年はおずおずと口を開いた。 「ククール、ルーラ、して?」 放たれた言葉に、赤い騎士服に身を包んだ青年は、きれいな青い瞳を見開いて少年を見下ろす。何か言いたげに口を開き、眉間にしわを寄せ、けれど言葉を見つけきれずに、結局開いた口からため息を零して額を押さえた。「どこ行くの」と地の底を這うかのような低い問いかけに、「アスカンタ」とエイトは答える。 ククールは苛立っていることを隠すことすらせず、舌打ちをしながらも移動魔法を発動させた。怒ったひとの顔というのは醜くなる場合が多いが、この男は怒っていてもきれいだな、と横顔を眺めながら思う。しかし、到着した町の入り口を見やって、エイトははたと気がついた。 「ごめん、ククール、間違えた。サザンビークだ」 そろそろ大臣助けにいかないと。 サザンビークとアスカンタが、頭のなかでよくごちゃ混ぜになるのはなぜだろう。前も一度、アスカンタ領とサザンビーク領を勘違いして、いない魔物を散々探し回った(安心と信頼の)実績がある。 サザンビークによろしく、と僧侶を見上げて頼めば、はぁあああ、とそれはそれは深く長いため息をつかれてしまった。伸びてきた手に両頬を摘まれ、そのまま引っ張られる。むにむにぐにぐにと、エイトの頬をもてあそびながら、それでもカリスマ騎士は結局サザンビークまで飛んでくれるのだ。 リーダからの命令は絶対だと思っているのか、あるいは少年からのお願いを断れないだけなのか。 ふたりのやりとりを、ほかの仲間たちは苦笑を浮かべて見守っていた。 余談であるが、この時点でエイトのゆうきスキルはマックスであり、つまりは少年もルーラは使えるし、ククールだってそのことを承知しているのであった。 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
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