エイトくんとトロルの晩ご飯 「てれれってってってっ! てれれってってってっ! てれれれ、れれれれ、すっちゃっちゃっ!」 「……三分クッキングの曲を歌うの、止めてさしあげろ。大臣たちが勘違いして泣いてるから」 まさに今、トロルたちの食材として捕らわれている人間がいる。その場で「料理のときの音楽」を歌うだなんて、「これからあなたたちを調理しますよ」と告げているように思われても仕方がない。「てれれってって、てれれってって、」と続きを口ずさむ少年の頭を叩いて歌を止めさせる。相手がボストロールであるため、それなりに気合いをいれて臨まなければ力つきる可能性もゼロではない。あの巨躯から繰り出される痛恨の一撃は、思わず息を呑んでしまうほどきついものがあるのだ。 とはいっても、体力と腕力があるだけけで補助魔法を重ねてかけなければ勝てないような戦いでもない。 出し惜しみをすることなく全力で攻撃をし、全力で回復をし、想定通り勝利を得たところで、「あの、さ、みんな」と戦闘前とは比べものにならないほどテンションを下げたリーダが、仲間たちへ声をかけた。 「あのボストロールたち、もしかして、大臣を料理して食うつもりだったの……?」 放たれた質問に何を今更、と呆れを覚えるほかない。だからこそエイトも三分クッキングのテーマ曲を歌っていたのではないのか。 言葉にはされなかったがどこか責めるような視線を向けられ、「あ、いや、わかってた、分かってたんだけど!」と少年は慌てて言う。大臣たちを助けなければということもきちんと理解はしていた。けれど、今になって改めて思ったのだ、あの魔物たちは鍋と包丁を使って、人間を『調理』しようとしていたのだ、と。 「……もしかして、お鍋も包丁も使えないエイトくんの脳味噌は、ボストロール以下ですか?」 震え声で放たれた疑問に、メンバはそっと視線を逸らせることしかできなかった。 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
|