エイトくんと奈落の祭壇


「ここは知らない」

 そう呟く少年の前には、地下へと続いているらしい洞窟の入口がぽっかりと空いていた。
 レティスより暗黒神ラプソーンを倒すほかない、とそう言われた。そのために必要なオーブを集めている最中に、ゼシカがある光景を見たというのだ。一度杖に意識を乗っ取られた彼女だからこそ、その気配を感じ取ることができたのかもしれない。
 竜骨の迷宮にもう一度潜り、最深部で更なる情報を得てやってきた場所は荒野。
 どうやら、ラプソーンの配下である凶悪な魔物が蘇ろうとしているらしい。そうと知っていて放置することなどできず、ラプソーンに戦いを挑んだ後に合流されでもすれば厄介だ。倒せるものなら先に倒しておくに限る。
 そうしてどこまでも続く地下への階段を下りてきた先で。

「何で、ここに……」

 ゴルドから行方をくらました男、マルチェロに会った。
 まさか彼と再び出会えるとは、そして同列に立って戦うことになろうとは、思ってもみなかった。敵として見えたときに苦しめられた真空波やグランドクロスは、味方であるときにはひどく心強く、頼もしい技となる。
 借りは返した、と去っていく背中を見送るククールの顔は、けれどゴルドで見たそれよりも少しだけ穏やかで、優しい表情をしているように見えた。
 これで彼ら兄弟の関係が良くなるだとか、彼らの複雑な感情が和らぐだとか、そんな簡単にいくものではないと分かってはいるがそれでも、決してマイナスになることではないだろう。そう思い、エイトは銀髪を揺らす青年の腕をそっと叩いて声を掛けた。

「これがあるからお前のグランドクロス、無くなったんじゃねぇかな」
「…………うん、そういう話をするような空気じゃないって気づけ?」




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2016.07.19