エイトくんトロデーンへ戻る 「……前に言っただろ」 性別や年齢や職業や身分は、泣くことを遮る理由にはならない。 悲しいときだけではない、嬉しいときにだって涙は出てくるものだ。 泣いても誰も笑わない、誰も呆れない。 諭すようにそう言われ、ぽん、とバンダナの上から頭を撫でられた。 恐る恐るそちらへ視線を向ければ、ひどく穏やかな笑みを浮かべている僧侶がいる。 未だ、信じられない。 信じてもいいものかが、分からない。 けれど確かに、今目の前には、呪いのとけたトロデ王とミーティア姫がおり、茨に覆われていた城ももとの美しい姿を取り戻している。 これが、見たかった。 この光景が、欲しかった。 これを取り戻すために、進んできたのだ。 唖然としたままもう一度城の様子を見やり、王と姫を視界に収め、そうして仲間を見回して。 ほろり、と少年の大きな黒い瞳から涙が零れた。 涙を浮かべたゼシカがエイトに抱きついてくる。 ヤンガスも同じように泣いてくれている。 ゲルダは少し呆れた顔をしつつ、それでも喜びの表情を浮かべている。 「っ、う、うぅー……っ」 「あー、ほら、唇噛むな、泣いとけ泣いとけ」 そんな中ククールが優しい声で唆すものだから、涙はますます止まらなくなってしまって。 ぼろぼろと泣いて喜びを表す少年勇者を包み込むように、トロデーン復活を祝う人々の歓声が響きわたった。 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
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