エイトくんとリーザスの塔 「この扉の仕掛け、トロデーン城とかにも取り入れられないかな」 村人しか知らない秘密なのだ、と念を押して村の少年が行った動作に、エイトは腹を抱えて笑っていた。こういうトリックは大好きだ。考えたひとは天才だと思う。 この塔だけの技術にしておくには惜しい。是非とも身近にこういうトリックを取り入れて生活したいものだ。 魔物の巣食う塔の内部を、相変わらず拳のみで突き進みながら、エイトは至極真面目な顔をして思案する。 「城にでがすか」 たとえば城のどこに、といちいちその言葉に返事をしてくれるのは、顔が怖いだけで、弟分の心根がとても優しいからであろう。 「謁見の間の入口とか」 「えっけんのま……えっと、王さまとかに会う部屋でげすか」 城などという建物とは縁がなかったため、うまくその場所をイメージすることができない。しかし言葉を知らないわけではなく、確かそのような使い方をする部屋、だったような気がする。 ヤンガスの言葉に、そう、と少年は頷いた。 「他国からの使者にも大ウケ必至」 俺なら爆笑する、と自信満々に言い切っているが、それもそうだろう、先ほど彼はとうに入る前にも五分ばかり、自分で引き上げては下ろして笑っていたのだから。 「……あとでおっさんに提案してみたらどうでがすかね」 正直、あの緑色の魔物が本当に国王であるとは信じていないし、彼らの言う「トロデーン城」がどこにあるのかも知らないが、自分ならば、たとえそのような状況になりえないと分かっていても、他国の使者としてその城へ向かいたいとは思えない。 下手をしたら国際問題に発展しそうである。 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
|