エイトくんとブーメラン


「エイトー、錬金釜でハイブーメランできたわよ」
「お、できあがりが早くていいねぇ。昔は時間かかったよな、これ」
「そうね。待ち時間がなくなったから、いらいらして釜を蹴らなくて済むわ」

 だからふたりともそういうメタ発言は、とヤンガスが何やら言っているが、もちろんスルーである。なんなら「レベル上がって全回復とかありがたい仕様になってる!」と叫んでやってもいい。

「つーかさ、お前、石投げられるんだったら、ブーメランも使えるんじゃねぇの?」

 そこへやり取りを聞いていたらしいククールがそう口を挟み、「あ、それアッシが言いたくて言えなかったやつ」とヤンガスが小さく呟いた。あのときはブーメランという武器があることを知らなかったため結局スルーしたけれど、石は「投げる武器」という扱いにはならないのか疑問に思っていた。

「どっちも投げる、ってんなら同じだろ。使ってみれば?」

 攻撃力のことを考えるのならば、もちろん素手よりは武器を使えた方が断然良い。そのあたりに転がっている石を投げるより、ブーメランを投げてもらったほうがパーティとしても助かるのだ。
 しかし、次の戦闘で試しにとエイトが投げたブーメラン(ハイブーメランの使用はゼシカの許可が下りなかった)がヤンガスの腹を殴り、ゼシカのスカートを掠り、ククールの後頭部に直撃。「当たり所が悪かったらオレ死んでた」とは青ざめた僧侶の言。(服真っ赤なくせに顔が青くてひとり信号機、と呟いたリーダにグーパンをお見舞いしていたため、殺しても死なないとは思うけれど。)
 結局彼の手には武器を握らせまいという認識を、メンバ内で改めて持っただけだった。




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2016.07.19