エイトくんとたねとスキル いいから食えつべこべ言わず食え、と押し付けられたものは、能力を引き出すための「たね」だった。 「かしこさとまもりのたねと、命とふしぎなきのみはおめーのために残してたんだ、さっさと食え」 「いででで、食う、食うから押し付けんな、ばか、鼻の中に押し込むなくそガキ!」 犯すぞ、と怒鳴ってパーティリーダを蹴飛ばし、距離を取る。普通に手渡されたら喜んで貰い受けるというのに、どうしていちいち言動がおかしいのだろう。脳が不器用だからだろうか。ため息を吐くも、ククールの疑問に答えをくれるものはいない。 「ちからとすばやさは俺が食ってる。こっちはお前の分」 今まで立ち寄った場所で得たものをすべてよけておいたそうである。まるで渡す相手を始めから決めていたかのような行動に頭痛を覚えつつ、渡されたものを口にした。一応彼らとは「仲間」としてこれから旅をすることになるのだ。足手まといになるのはごめんであるし、能力が強化されるのなら拒否する理由はない。 「いや、別にオレは助かるけどさ。ヤンガスやゼシカ嬢はいいわけ?」 彼女たちだって大事な戦力なのだ。一点集中するかのように与えられて、それでいいのだろうか。 首を傾げたククールへ、「いいんだよ、あのふたりは」とエイトはあっさり言った。 「だって、あいつらは使えるスキル、上げてるから」 スキル、つまり技術、だ。 個人で使うことのできる技があり、すべてを習得できるわけではない。それぞれ「系統」があり、装備している武器などで、どの系統を習得するかを考えるのだけれど。 「ヤンガスは今オノ、だっけ」 「そ。かぶと割りは必須。余った分は人情に回してる」 「ゼシカは、杖か」 「MP自動回復のためにな。あとはどこかでスケベな海賊が出てくる気がするから、おいろけも上げときたいな」 「……お前、格闘?」 「もち。俺、格闘と勇気以外意味ねぇもん」 それぞれの能力と、先を見据えてのスキルの割り振り。どれほど手先と脳味噌が不器用であろうと、彼がこのパーティをまとめるリーダだ。一つの駒である自分たちは、基本的には彼の考えに従ってどのスキルを習得するかを決めていた。 「……ところでエイトくん。オレはなんのスキル上げる予定なの?」 「カリスマ」 だからたねを食え、ともう一つポケットから取り出されたまもりのたねを受け取って口の中へ放り込む。 使えないスキルだと認識しているのなら、どうしてそのスキルを上げさせようとしているのか。聞いたらたぶん、何かが爆発するような気がする。そのため、疑問と一緒に貰い受けたたねを飲みこんでおいた。 噛み砕かず飲みこんでも、効果は発揮されるものだろうか。 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
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