エイトくんと願いの丘


「ね、エイト、あれ、プチアーノンじゃない?」

 丘へ向かうために川沿いの道を歩いていた際、不意にゼシカがそう口を開いた。彼女が指さす先には、小さなイカ(あるいはタコ)の魔物。定期船の航路を邪魔していたオセアーノンの幼生である。
 彼女がわざわざその魔物を示したのは、フォートから頼まれていた写真一覧の被写体として指定されたものだったからだ。

「遊んでるすがたを撮れってまた難しいでがすな」
「任せろ任せろ、エイトくんがばーっちりとってみせるよ!」
「あんたカメラ使えないでしょうが」

 実はカメラさえうまく使えなかったため、今までの写真はすべてヤンガスとククールの手によるものだった。
 「魔物の香水」の効果時間が思っていたよりも長いため、正直あまり使いたくはない。しばらく川べりをうろうろし、「よーし、良い子だ、かわいいよー、すてきだよー」と力の抜けるエイトの声をBGMになんとか写真を一枚撮影することに成功した。

「プチアーノン、すげーフリーダムな魔物だな」
「あいつもエイトにだけは言われたくねぇだろうよ」

 戦闘中にらくがきをしたりぼんやりとしていたり、おそらくあの魔物はこちらを敵だとは思っていないのだろう。遊び相手が現れた、くらいの認識なのかもしれない。戦闘中どこぞへ消えてしまったプチアーノンCの行方をエイトが心配していたため、「おかーさんにでも呼ばれたんだろ」と返しておく。たぶん昼食か夕食の時間だったのだ。

「ところでうちのククールさんはいつべホイミ覚えてくれんの?」
「うるせぇ。だったらさっさとオレのレベルを15まで上げろよ」
「えー、だってエイトくんのレベル、もう15ですよ?」
「おめー、オレらと合流するまでにレベル上げてたろ」

 頂上にたどり着くまでに無事僧侶のレベルは15に上がったが、同時に得られたスキルポイントでカリスマスキルが上がって覚えた「天使の眼差し」のせいで、折角覚えたべホイミについてエイトが言及することは結局ないままだった。

「あはははははっ、目っ、目ぇ光って……っ! つーかこれ、MP4も消費すんのかよっ!」
「笑うくらいならやらすなよ! お前をマヒさせてやろうか!」




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2016.07.19