エイトくんと剣士像の洞窟 「いっ、」 てぇええええええっ、と少年の絶叫が洞窟内部に響き渡った。 したたかに打ち付けた頭を抑え、その場にしゃがみ込んでいる。被害が彼ひとりであるのなら、指をさして爆笑してもいいのだが、如何せん四人まとめて頭を打ち付けたものだから、誰も口を開けないまま悶絶していた。 「と、とびあがるとか、聞いて、ねぇでがす……」 「あたまは、ちょっと……勘弁してもらいたいわね」 「オレの頭脳がエイトになったらどーしてくれんだよ……」 剣士像のある洞窟は、入ってすぐ正面に宝箱が設置されていた。ただし、その場から直接宝箱へ至る道はない。頑張ったら行けそうな場所にある気もするのだが、システムの壁には勝てないものである。 「さっきの飛び出るドアはなんとなく予想ついたんだけど、こっちは完全に予想外だった」 すっかり忘れてたぜ、とようやく痛みが和らいだのか、涙目のまま立ち上がったエイトがそうぼやいた。ここにたどり着くまで、トラップとして飛び出てきたドアに押され、落とし穴に一度落ちていたのである。予想できていたのならどうして避けなかったのか、という尤もな指摘に、「一回落ちときたかったから」とよく分からない言葉が返ってきた。障害は乗り越えるもの約束は破るもの、そして落とし穴は落ちるものである。 頭上を仰ぎ見ろという指示のもと、穴の開いている箇所を確認して石像を動かし、何度も確認をしてから(またあの勢いで頭をぶつけるのはごめんである)石畳の上へと移動した。ぽしゅん、と打ち上げられ、ようやく目当ての宝箱の正面へとたどり着けたようである。 「回復ポイントがあるっつーことは」 「ボスがいるんでしょうね、この上に」 「まあしょうがねぇでがすよ」 「よっしゃ、とりあえず行くぞー。ヤンガスはいつものようにかぶと割り、終わったら蒼天魔斬な」 「うっす!」 「ゼシカはピオリム、余裕があればヒャドで攻撃。あいつの痛恨大体80前後のダメだから、HPの残りに気をつけて」 「分かったわ」 「ククールはスクルト重ねがけな。ゼシカとヤンガスの回復を優先。手があくようならディバインスペルあたりをよろしく」 「了解」 「俺はひたすら殴るから」 「そうしてくれ」 ボスに至るまでしっかりと魔物を倒してきていたため、誰ひとり欠くことなく撃破し、ビーナスの涙をゲットできたのはいいのだけれど。 「おいこら、くそカリスマ! てめー、混乱して俺に攻撃仕掛けるとは、どういう了見だ!」 「お前だってぐーすかぴーすか寝てただろ!」 「ラリホーとメダパニ、いっぺんにかかったくそ僧侶に言われたくねぇよ!」 目を覚ましても混乱してるとかお前なんなの、と少年に罵倒され、「うるせぇうるせぇうるせえっ!」と赤い僧侶が癇癪を起していた。 「どーでもいいんだけどさ、写真クエスト『モリーカラーのちっちゃなアイツ』さ、海岸沿いにいるっつーからすっげー砂浜をうろうろしてたのに、上の平原にいるとか詐欺じゃね?」 「『海岸沿い』ではあっただろ」 ブラウザバックでお戻りください。 2016.07.19
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