恋人宣言・0


 ある日、エイトが仲間の前で突然宣言をした。

「俺、ククールのこと、好きになった!」

 どうしてそんな告白を公衆(といってもその場にいたのはパーティメンバと王様と馬姫だけだったが)の面前できっぱりと言うことができるのか。軽く頭痛を覚え、額を抑えたククールを無視して、エイトはびしっと彼を指差す。

「ってことで、これから落としにかかるから、よろしく」

 いや、よろしくって言われても。
 エイトのことは嫌いではない。面白い男だと思うし、その実力も認める。頭の中身はさっぱりだが、それは日常面においてのことで、戦闘面での判断は彼に任せておけばまず間違いない。この若さで近衛兵にまで上り詰める男だ、それくらいできて当然なのだろう。合理的な考え方をし、感情に流されず、だからといって非情というわけでもない。リーダとしては申し分ないし、仲間として彼のことは好きだといえる。
 しかしそれは飽くまでも仲間としての話であって、恋愛対象としてではない。決してない。
 そもそもククールは普通の健全で健康な男なのである。いくらエイトが童顔で、背が低くて、たまに女に間違われることがあったとしても、豊満なバストもなければくびれた腰も、柔らかなヒップもない。そんな相手に欲情するかと問われれば、きっぱりと否、と答える。当然だ。

「勘弁してくれよ」

 うんざりしたように顔を抑えてそううめいたククールへ、ゼシカが同情のこもった声で「ご愁傷様」と呟いた。

 どうせそのうち飽きるだろう、それまで我慢すればいいだけだ。

 ククールは自分に言い聞かせるように、何度もその言葉を心の中で呟いていた。




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2006.01.09