番頭と元一般人の空の冒険
 ひとまず探索者たちは、内省する。
 自分の名前は分かる、レオナルド・ウォッチ、十九歳。くそったれな神性存在お抱え技師の手により、これまたくそったれな神々の義眼などという代物を押しつけられた。自分が弱く臆病なばかりに、妹の視力が犠牲となり、彼女の世界を取り戻すために異界と人間社会の混ざる都市、ヘルサレムズ・ロットへとやってきたのだ。
 ふむ。自分のことについてはさほど問題なく思い出せそうだ。しかしここにはレオナルド以外にももうひとり、男がいる。
 すらりと背が高く、手足の長い人物。顔も小さく、モデルか役者と言われても納得できそうな容姿。その左ほおに大きな傷が残っているが、それすらも男のミステリアスさを際立たせるアイテムになっているようだった。仕立てのいいスーツ、ブルーのシャツにイエローのネクタイを合わせるセンス。それなりに裕福そうだな、ということは分かる。
 どこか呆けたような顔をしてこちらを見ているこの男。
 彼はいったい誰なのだろう。


首を傾けて考えこんでみるが、思い出せる名前はない。

じっくりと眺めたその姿が、記憶にある何かをひっぱりあげてくる。





2019.04.01
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