遠いといっても右にあるものと比べてというだけの話で、たどり着くまで二十分もかからないだろう。ぽすぽすと、雲のエフェクトを散らしながらふたりでそちらへと向かう。 しかしじっとその方向を、穴と思われる箇所を眺めていると、言いようのない不快感が胸の奥から沸き起こってきた。なんだか頭がくらくらとしてくる。しっかりと目を開いているはずなのに、義眼で確認をしているはずなのに、自分が何を見ているのかが分からなくなってくるのだ。義眼を埋め込まれた当初は似たような感覚を覚えたものだが、それとは何かが、けれど根本的に異なっている。まるで具体化された違和感を無理矢理見せつけられているようだ。恐ろしさ、おぞましさ、すべてのマイナス感情を凝縮したものが、今から行く場所に待ち構えているような、そんな気配。 ぞわり、と背筋を悪寒が這い上がる。くるくる、くる、くる、目の奥で何かが巡り回って、くらくら、くら、くら、頭蓋の内で脳が、揺れている。己のうちで、確実に何かが減った、ような。 「――――ッ」 本能的な嫌悪感にレオナルドの足が止まるのも仕方がないだろう。進みたくない、怖い、苦しい、行きたくない、おぞましい、怖い、気持ち悪い、怖い、怖い、こわい。 ゴーグルの内側でぱっちりと開いたすべてを見通す眼を彷徨わせる。 「少年? どうかしたか?」 突然止まったレオナルドに気づき、振り返ったスティーブンが気遣うように声をかけてくれた。 静かに這い寄る狂気にパニックに陥っていた少年は、咄嗟に、
2019.04.01
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